すし職人ブログ18―面接官の憂鬱

まず、椅子に座ってくれ(>_<) あたしはすし職人である。したがって寿司をお客さんに握るのが本分である。 しかし今はどういうわけか、すし学校に勤務している。そうすると、すし職人でありながら、教師ということにもなってしまうらしい。 それで、すしを握…

「あの行列」について

これぐらい怖いと感じる人も、いるのでは? このブログは世間の評価を意に介さずに、書きたいことを書いています。それでぼくは「よくあんな事、書けますね」とか「度胸ありますね」とか、よく人に言われます。 今回の話も、同業者の方にとっては、けっこう…

オペラによる町おこしから、新しい商売を考えたぜ

”演劇バー”はこんな感じでどうでしょう ぼくは香川県に住んでいる。 香川県の南は徳島県である。高松と徳島の距離は60キロである。東京の都心部からだと八王子、大阪の梅田からだと明石くらいの距離である。 こういうと「ちょっとあるな」と思う人もいるかも…

諸行“有料”―ぼくが般若心経を覚えたわけ

もしかしたら、こういう事だったのかもしれない 世の中には般若心経というものがある。仏教の経典の一つだ。すべてのものは移り変わり、同じくとどまるものは何一つない、ということが書いてある。言っていることは身も蓋もないのだが、それこそがまあ人生の…

せとうち寿司親方ブログ17―ナポレオンか、長八か

長八さん選挙ポスター 前回の話(りんご寿司学校ならびに、サンタクロース寿司学校における親方選考の話)はデリケートな内容なので、すし業界の人間たちからの反応は少ないだろうと思っていた。ところが意外に反響が大きくて、驚いた。 親方選考については…

せとうち寿司親方ブログ16―人間の「運」について

運だけはいい奴ら 先月(2023年9月)の初旬に、東北に行った。 あたしは魚の胸鰭のあたりを調理するのが得意だ。そのことについて話してほしいと、りんご寿司の親方にリクエストを受けたのだ。 実は27年前に、あたしはりんご寿司で1年ほど修行してい…

せとうち寿司ブログ15―タイパ、タイパと言うけれど…

これもタイパ 最近「タイパ」という言葉をよく使うよね。「タイム・パーフォーパンス」のことだ。知識を身につけたり、技術を学ぶためには一定の時間がかかる。その時間が短ければ短いほどよい、というのが「タイパ」の考え方だ。 すし学校の学生たちも、「…

地方の「ベスト・キッド」たち

地方で研修 はじめて封切されたのは40年ほど前にもなろうかと思うのだが、“ベスト・キッド”という映画があった。いじめられっ子の少年が、空手の修行を通じてたくましくなり、ついにはいじめっ子をやっつける話だ。勧善懲悪とスポ根のミックスしたストーリ…

せとうち寿司ブログ14―ギャグブログ「委員会」

すし職人むけの雑誌で、「造形すし学」というのがある。「造形すし学」は、美しく寿司を握ることをテーマにしている月刊誌だ。あたしはこの雑誌で、今年(2023年)の1月から連載を始めた。このブログの読者の皆さんの中には、読んでくれている人もいると思…

どうでも、イーヤス

すし屋vs家康 「どうする、家康」というドラマが流行っているらしい。主役である徳川家康を演じているのが有名なタレントであることもあって、このドラマはかなり人気があるそうだ。 しかしぼくは、徳川家康が嫌いなので、このドラマは見ない。徳川というか…

せとうち寿司親方ブログ13-「マウント」について

この人にはちょっと無理だろうなー。 ここ数年だと思うのだが、「マウント」という言葉が流行っているね。「マウント」というのは、人前で自慢をして、自分の優位性をひけらかすことだよね。 たとえば車の話が出ると「いやー、ぼくはフェラーリに乗っていて…

山中の「駅前食堂」に、土佐のサムライを見た

燦然と輝く看板 高知県が、ぼくは大好きだ。 ラテン系というか、人間が明るくて、瞬発力がある。「ヤンキー濃度」が高い、と評されることもある。 しかし「ヤンキー」のどこがいけないのであろうか。ぼくも高知にちょくちょく通うようになってから、親しい友…

せとうち寿司親方つれづれ日記12―俺のクリスマスソングは竹原ピストルだぜ!

この歌詞、みんな変だと思わんのですかね? あまり人前では言わないが、あたしはクリスマスが苦手なんである。 「せとうちの野郎は、またつむじ曲がりなことを言って!」と、非難されるのはわかっている。でもまず、次の文章を読んで欲しい。 ーーーーーーー…

せとうち寿司親方つれづれ話11—ランチョンセミナーでは、ベントー作ったシェフが本当のヒーローだぜ!

本当のヒーローは、君だ! われわれすし職人は日々、新しい鮨を開発している。新しい握り方を試してみたり、今まではなかったネタを使って新機軸の寿司を作ったりしている。こうした発見を伝えるために「すし学会」という場があることは、前回のブログで述べ…

せとうち寿司つれづれ日記10―「すし学会」は未来の鏡

オシャレしたい気持ちはわかるけどね すし職人の業界には「学会」というものがある。 皆が集まって仕事に関わる情報を交換するのが、学会の目的だ。 たとえばある職人が、寿司の新しい握り方を開発したり、いままでになかったネタを使った寿司を創作したりし…

「流れ者」たちの宴(うたげ)

こういう近況報告が多いんですよ 先週の土曜日に松山で、高校の同窓会が催された。 正確にいえば高校の「四国同窓会」で、卒業生で四国に今すんでいるか、住んだことのある人間たちが年に一度集まって、酒を飲むのである。 この集まりがまた、味がある。 一…

のび太、しっかりせんかい!(1)

ジャイ・ハーン おことわり(この物語はフィクションであり、実際の国家や人物とはなんら関係がありません) 最近、ジャイアンとのび太の関係が、あまりよくありません。のび太とジャイアンの家は近いのですが、ジャイアンはちょくちょくのび太の家の裏庭に…

せとうち寿司シリーズ9ー「すし処方」について

武田仕出し店製造「マンボウすしパック」 一般業界の方々は、すし職人と言えば、みんな包丁を朝から晩まで握って刺身を切っていると思うだろう。 ところが、必ずしもそういうわけではない。 たしかにあたしを含めて、包丁を一日中握っている職人も多い。だが…

なんもない田舎街こそ、通のバカンスだぜ

こういう街がいいんだな お盆前の週末に、ふっと時間ができた。そこで足摺岬の周辺を、1泊でぶらっと旅行した。ぼくの住んでいる香川県から高知市までは、車で2時間だ。足摺までは高知市からさらに3時間くらいかかる。しかし運転が好きなので、まったく苦に…

世の中に「オバちゃん」は必要だ

ぼくは香川県を本拠地にしているのだが、ときどき東京や大阪にも手術に行く。何か前か、神奈川の病院に手術をやりに行った。患者さんは小学生であった。 手術はうまく行った。手術の翌日にも念のために患者さんを診察に行ったのだが、さしたる問題は見られな…

すし学校における「働き方改革」―せとうち寿司シリーズ8

カストリ焼酎って、なんか、美味しそうですよね ここ数年、「働き方改革」が世の中で議論されているね。いわく「日本人は働きすぎで人生を楽しめていない。だから仕事をする時間を減らして、趣味の時間や家族と一緒にいる時間を増やしましょう」というわけ。…

Don't Kneel Down!

Figure 1-How to use portable tatami. I am working at a university as a teacher. In my regular classes, I give students certain themes and give them homework of writing reports about the themes. I’m considerate in selecting the themes. I do…

ことわざを創ろう

昔の僕と、東施さんです 長い人生を生きていると、恥ずかしい思い出がたくさんできてくる。なぜあんな恥かしいことをしたのだろうと、振り返ると顔から火が出る。 だれだって自分の恥はさらしたくない。だから恥かしい思い出は、だれにも話さず、墓場まで持…

江戸時代じゃねーし

これが何かは、読めばわかります ぼくは一応、大学の先生なので、学生を教育しなくてはいけない。そこで学生たちにテーマを与えて、レポートを提出するように求めている。ネット上ですぐに検索できるようなテーマを与えては学生のためにならないし、採点する…

「転校番長」はつらいよ

気合が大切じゃい! ぼくの勤務している大学の胸部外科に、この4月から新しく教授が赴任されてきた。 新任の教授は·、いままではある関東の国立大学に准教授として勤務されていた。肺の手術が上手なので、腕を見込まれて、晴れて香川大学に教授として招聘さ…

「すし研修制度」―せとうち寿司シリーズ7

いまどきは、こんなものかも すし職人になるには、修行が必要だ。 「すし学校」で、すしに関する基本的な知識に関しては教えている。たとえば魚の種類であるとか、包丁の持ち方であるとかいった、本当に初歩的なことだ。 ところがすしの道は深いので、すし学…

すし職人たちの将来―せとうち寿司シリーズ6

今後いったい、どうなるのか わが国においては)、すしを握る国家資格を取得しないと、職人として働くことはできない(「初めてこのブログを読まれる方々は(https://nagasao.hatenablog.com/entry/2021/05/27/215956)をご参照ください」。 つまり、だれも…

イエス様「ちゃぶ台」事件

一徹・イエス様共同作業 半世紀も生きてきたので世の中のことはだいたいわかっているつもりであったのだが、自分の無知さに打ちのめされている今日この頃である。 「ちゃぶ台返し」の件である。 ことの発端はぼくが実際に、パンを食べながら学校へ急いでいる…

日中希ギャグ国際研究—「ちゃぶ台返し」は笑えるか?

ギャグのとらえ方は、国によりけり ことの発端は、ぼくがある朝、自転車に乗りつつパンを食べている少女を目撃したことだった。 少女はおそらく高校生で、寝坊をしたために食事をする時間がないまま、慌てて学校に行っていたのだろう。 その少女を見てぼくは…

「すし学校における人事」ーせとうち寿司親方つれづれ話5

この意味は本文を読んでいただければわかります 前回は「基礎すし学」と「実践すし学」の話をした。 寿司というものは、単純に考えると魚の切り身をシャリの上にのせたものに過ぎない。 だが、それが一つの文化になりえたのは、刺身なりシャリに対して、先人…