ものを書くということ

 ものを書くことは、自分の頭の中にある思考内容を外部に表現することですが、その内容の価値について自己評価を行ういい機会でもあるように思えます。いろいろとものを考えていて、その思考の内容が自分ではたいそうなものに思えていても、いざ表現してみると大したことを考えていないことが、多々あります。

 だれかの文章で読んだことがありますが、例えば虫歯で苦しんでいる時には、それが自分の存在をほとんど塗りつぶすほどに大きな問題であるように感じます。しかしその虫歯を抜き、掌に載せてみてみると、その小さな物体がなぜあれほどまでに自分を苦しめたのか不思議になる、そんな経験をしたことはないでしょうか。

 これと同じことで、主観的には素晴らしいことを考えているつもりでも、実際は同じ考えを反芻していたり、論理的に重要な飛躍があったりして、自己の考えを過大評価しているような場合が私にはよくあります。

 書くという行為の有している、いったん頭の中にある考えを取り出してみて、それを客観的に評価するという側面が、少なくとも私には有用です。